内容証明
1.内容証明とは
差出日、受取人住所・氏名、差出人住所・氏名、手紙の内容を日本郵便株式会社が証明してくれる書留郵便です。簡単にいうと
いつ誰が、誰に、どんな内容を出したか
ということを郵便局が証明してくれることです。
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2.利用する目的
普通の手紙を相手に送っただけでは、相手が受け取っていないと言われたら、それまでです。内容証明を送ることで日本郵便株式会社が証明していることを受取人に伝えられます。
例えば、金銭の貸し借り、建物賃貸借、物品の売買予約など相手方との間にある種の契約が存在していて、その履行を促す為の通知をする場合に有効です。
その内容証明があると、将来トラブルが発生する可能性を未然に防ぐためや、現に発生しているトラブルを解決するための手段として利用できます。
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3.心理的な効果
そもそも、内容証明を受け取る機会は少ないのではないでしょうか。普通の手紙と異なり格式ばった形式で書かれている書面で、書留郵便で配達され、内容証明の文面の終わりに「この郵便物は平成○○年○○月○○日第○○○号書留内容証明郵便物として差し出したことを証明いたします。日本郵便株式会社」という記載とハンが押してあり、裁判上の証拠力があります。
文章の内容が証明されるほかは他の郵便物と変わらない内容証明ですが、「内容証明」という形をとることによって、そのことが強い意思を表明し、次の段階として強い法的措置を予定していることを伝えるという事実上の効果を相手にもたらします。実際に、裁判に持ち込まれる前に問題が解決する場合も少なくありません。
ただ、逆に内容証明を送ることによって、相手方の態度を硬化させ問題がこじれてしまう場合もあるので、慎重に考えることが必要です。
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4.書き方
@用紙使用する用紙は、便箋、原稿用紙、メモ用紙等の決まりはなく、どんな用紙でもよいです。
大きさも自由で、簡単なメモ用紙でもかまわないのです。
ただ、同文の手紙が3通必要です。
1通は相手方(受取人)、1通は差出人が持ち、残りの1通は郵便局が保管します。
文章の書き方は、縦書きでも横書きでも構わないのですが、縦書きの場合は1行に20字以内、1枚に26行以内、横書きの場合は1行に26文字以内、1枚に20行以内と決まっています。
近年、公的文書やビジネス関係文書は横書きが主流ですので、のちの例文も横書きで説明してあります。
(内容証明郵便用の用紙が販売されています。内容証明書用紙と名付けられ、株式会社日本法令や文房具店等で取り扱っています)
A枚数
枚数に制限はないので、書きたいだけ書けます。
ただし、2枚以上になる場合は、ホッチキスやのりで綴じ、つなぎ目に差出人のハンを押す必要があります。これを契印または割印といいます。
2枚以上になる場合は、内国郵便約款で決められているので、忘れずに契印(割印)をしてから郵便局へ持って行きましょう。
B文字
使用できる文字にも制限があります。
かな、漢字、数字です。数字は算用数字(1,2,3・・・)漢数字(一,二,三・・・)も使うことができます。
英字は、固有名詞(氏名、会社名、地名、商品名等)だけです。
なお、英語等の外国語による内容証明郵便は認められていませんので、日本語で書かなければいけません。外国人も日本語で書く必要があります。(外国人はハンを持っていないので割印の際はサインをすることになります)
記号や句読点では、%、+、m等は1文字、u、s、@等は2文字として数えます。
ただし、かっこに関しては、合わせて1字とし、字数計算上では上のかっこのある行の字数に含めて数えます。(「」、『』、()、文中の序列を示す1や(1)や(傍点)も1文字)
C差出人と受取人
差出人の名前だけでなく、住所を書くことも義務付けられています。
差出人の住所氏名、受取人の住所氏名を原則として冒頭か最後に書きましょう。
Dタイトル
内容証明郵便には、よくタイトルがついています。たとえば「賃金請求書」「売掛金請求書」「賃金値上通知書」「家賃支払催告書」「賃貸借契約解除通知書」あるいは簡単に「通知書」「通告書」「請求書」「催告書」などです。
書かないといけないという決まりはないので、タイトルをつける、つけないは作成者の好みとなります。
もしも、タイトルをつける場合は、内容にあっていれば、どんなタイトルをつけてもかまわないです。
E時候の挨拶
とくに書く必要はなく、すぐ要件を書くのが普通です。
内容証明郵便は堅苦しいため、意識的に時候の挨拶を入れる場合もあります。
F封筒
現金書留のように内容証明郵便専用の封筒はないので、市販されている封筒を使用します。
表側に受取人の住所氏名、裏側に差出人の住所氏名を書きます。
また、複数の受取人に送る場合は、受取人1人ずつの住所氏名を書きます。
(内容証明郵便に書いてあるものと同じに書き、違っていてはいけないので注意すること)
封筒は封をせず、郵便局へ持って行き、郵便局で内容証明郵便の手続きをしてから封をしましょう。
G資料や写真
内容証明郵便の場合は、手紙文以外の物を同封することができません。
必要に応じて、別郵便で送付する旨や必要があればコピーを送る旨を手紙の内容に記載しておくと良いでしょう。
H差出人が2人以上のとき
差出人が複数の場合、差出人それぞれが内容証明郵便を作って差し出すこともできますが、同一の文面であれば、連名で出せば1回で済み、簡単です。
差出人が複数の場合、住所・氏名をそれぞれが記載し、訂正印や契印は全員が押します。
I受取人が2人以上のとき
Hとは逆に、受取人が複数の場合ですが、もちろん同じ内容証明郵便を別々に差し出すこともできますが、この方法だと複数回も内容証明郵便を作って送ることになります。
受取人が違うだけで、同じ内容のものならば、1回の内容証明郵便で出すことができます。(同文内容証明郵便)
さらに、完全同文内容証明郵便と不完全同文内容証明郵便と2つに分かれます。
完全同文内容証明郵便
2人以上の受取人にあてた内容証明郵便で、手紙の内容が全く同じであるだけでなく、日付、差出人の記載、受取人の記載が全く同じものを作成する方法です。
2人以上の受取人に出すものですから、受取人全員の住所氏名が連記してあることになります。
受取人1名の普通の内容証明郵便の場合には、受取人用、差出人用、郵便局用の合計3通ですが、完全同文内容証明郵便の場合には、受取人が増えた分だけ増やします。
例えば、受取人が3名なら、受取人用3通、差出人用1通、郵便局用1通の合計5通です。
受取人の数プラス2通となります。
不完全同文内容証明郵便
完全同文内容証明郵便と違い、受取人全員の住所氏名を連記せず、受取人の記載を1人ずつ別々に書いて作成する方法です。
違うのは受取人の記載が連記していないことだけで、日付や文面の内容は同一です。
完全同文内容証明郵便と同じく、受取人の数プラス2通の作成となります。
ただ、注意する点があり、郵便局と差出人が保管する手紙文の2通は、受取人全員の住所氏名を連記します。
受取人に送るものは、受取人1人ずつの住所氏名を書きます。
J代理人によって出すときの注意
内容証明郵便は、必ず本人が出さないといけないわけではなく、代理人をたて、その人に出してもらうこともできます。
代理人によって出すときは、誰の代理人として、誰が出すのかが、はっきりわかることが大切です。
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5.出し方
普通の手紙と違ってポストに投函するだけではなく、決まったルールに従って書いてあるか等を取扱っている郵便局へと持って行く必要があります。内容証明郵便は、どこの郵便局からでも送れるわけではありません。
内容証明郵便を取り扱うのは、集配郵便局と無集配郵便局に限られています。
どこの郵便局で取り扱っているかわからない場合には、最寄りの郵便局に行ってたずねてみるか、電話して内容証明郵便を取り扱う郵便局を教えて貰うか、インターネットの日本郵便のサイトからも検索することが可能です。
郵便局へ持って行くもの
内容証明郵便 3通(受取人用、差出人保管用、郵便局保管用)
A封筒 1通(受取人、差出人が1名の場合)
表側に受取人の住所氏名、裏側に差出人の住所氏名を書いて、封をせず持って行きましょう。
B印鑑
その場で訂正する場合がありますので、必ず持参した方が良いでしょう。
C郵便料金
通常郵便料 | 定型で25gまで 84円 50gまで 94円 |
内容証明料 | 1枚の場合 440円 2枚目以降は1枚ごとに260円増しとなります。 |
書留料 | 435円 |
配達証明料 | 差出の際 320円 差出後の場合の際 440円 |
速達料 | 250gまで 260円 |
本人限定受取料 | 210円 |
例 手紙文1枚の場合
通常郵便料(84円)+内容証明料(440円)+書留料(435円)+配達証明料(320円)=1,279円
手続き
郵便局の窓口に内容証明郵便と封筒を出すと、字数や行数、訂正印や捺印が押してあるか等々を調べます。
調べ終わり、審査に合格し受理されると「この郵便物は平成○○年○○月○○日第○○○号書留内容証明郵便物として差し出したことを証明いたします。日本郵便株式会社」と記載し、その下に通信日付印を押します。受取人用の1通は、郵便局員立会いの下に、封筒に入れて封をし、郵便局員へ渡したのが受取人に郵送されます。
この時に、「書留・配達記録郵便物等受領証」が渡されて終了となります。
この受領証は、その書留郵便が何らかの事情により受取人に配達されなかった場合に生ずる損害賠償を日本郵便局へ請求する際に必要となり、また郵便局に保存してある内容証明郵便を閲覧する際や、内容証明郵便を紛失した場合にも必要となりますので、大切に保管しておきましょう。
また、いつどこで届いたか否か等が郵便局の「郵便追跡サービス」で確認が出来ます。
手続きには、差出人本人が必ず行かなくてはいけないことはなく、他の人が持って行って手続きをしても何も問題ありません。
必ず配達証明にすることを忘れずにしましょう。
内容証明郵便だけでは、受取人に配達されたのかどうか、いつ配達されたのかもわかりませんので、内容証明郵便にした意味がなくなってしまいます。
配達証明付にしてもらうと、いつ受取人に配達されたかの証明になります。
本人が必ず受け取って貰う方法
内容証明郵便を配達証明付で出した場合は、受取人に配達されたかどうかの証明はできますが、本人が直接受け取ったかどうかまでの証明ではありません。
例えば、会社宛の場合、社長宛であっても従業員が受け取る場合もあります。
そこで、受取人本人が直接受け取って欲しいときは、本人限定受取法という方法があります。
内容証明郵便に本人限定受取を追加して郵送すると、受取人へ到着通知書が送付され、受取人が郵便局で本人確認書類(運転免許証等)を提示して受け取ることになります。
これに、配達証明をつけることで、受取人本人にいつ配達されたことが証明できることになります。
内容証明郵便を紛失した場合や再度証明をするには?
発送した内容証明郵便の本人控え(謄本)を紛失してしまった、見つからない、もしくは原本がもう1通必要という場合、郵便局で保管された正本の閲覧、または再度の謄本交付をしてもらうことが可能です。
その際に大切に保管しておいた「書留・配達記録郵便物等受領証」が必要となります。
郵便局は、5年間保管しておくことになっているので、その期間内であればいつでも閲覧が出来ます。
ただし、閲覧ができるのは、差出人だけです。
内容証明の謄本閲覧または謄本の再度証明に必要なもの
元の書面と同じもの(捺印も同様) | 1部 |
※謄本の再度証明の場合のみ | |
書留の受領証 | 1通 |
差出人の身分証明書(免許証等) | 1部 |
内容証明謄本交付または閲覧費用 | 430円(1枚の場合) |
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6.電子証明書
電子内容証明の特徴電子内容証明とは、内容証明郵便を、インターネットを通じて郵便局に差し出す方式のことです。
差出人は、内容証明郵便の文書をワープロソフト(ワードや一太郎)で作成し、それを新東京郵便局へインターネットで送信します。すると、郵便局がその文書を内容証明郵便として受け付け、二通を作成して、一通を受取人に、もう一通を差出人に配達します。
新東京郵便局での受付は、インターネットを通じて行うため、24時間受け付けています。
インターネットを用いて差し出すため、通常の内容証明郵便のように、郵便局へ行く必要はありません。また、封筒や差出人の押印も不要です。
郵便局から、受取人や差出人への送付は、インターネットを通じて行うのではなく、通常の内容証明郵便と同様、郵便局員が配達します。
通常の内容証明郵便は、一行20字以内、一枚26行以内という制限がありますが、電子内容証明郵便には、そのような制限はなく、一行に21字以上、一枚27行以上の文書を作成することができます。
もっとも、無制限というわけではなく、余白、文字ポイントサイズ、最大ページ数には一定の制限がありますので、注意が必要です。
詳しくは下記のホームページアドレスでご確認ください。
電子内容証明のホームページアドレスは
http://enaiyo.post.japanpost.jp/mpt/
電子内容証明利用の流れ
1.利用者登録を行う
電子内容証明を利用するには、事前に利用者登録を行う必要があります。
利用方法は、
@クレジットカードを用いて利用料金を支払う方法と、
A料金後納にて利用料金を支払う方法があり、いずれかを登録します。
2.電子内容証明ソフトをダウンロードする
利用者登録支払方法の手続きを完了したら、電子内容証明ホームページへ接続し、電子内容証明の作成に必要な専用ソフトウェア(e内容証明ソフトウェア)をダウンロードします。
e内容証明ソフトウェアは、内容証明郵便を扱う郵便局からインストール用のCD−ROMを無料で入手することもできます。
3.電子内容証明の作成
電子内容証明には、通常の内容証明のように、一行二○字以内・一枚二六行以内という制限はないと書きましたが、まったく無制限に文書を作成できるわけではありません。
4.電子内容証明の差出し
電子内容証明の文書を作成したら、e内容証明ソフトウェアを起動し、郵便ファイル作成の画面へ進み、差出し文書の選択、差出人の入力、受取人の入力をします。
差出人・受取人の住所氏名は、本文中に自働挿入されます。
受取人ごとに、速達、配達証明、親展を指定することができます。
5.電子内容証明の配達
郵便局は、送信された電子内容証明本文をもとに、受取人宛ての郵便物と差出人宛ての郵便物とを作成し、専用の封筒に入れ、受取人宛ては書留郵便物として、差出人宛ては配達記録郵便物として配達します。
受取人宛てについての配達証明付きにした場合は、配達証明のはがきが、後日、差出人のところに届きます。
6.謄本の再度証明
差し出された電子内容証明の謄本について、再度証明を発行してもらうことができます。
ホームページを通して申し込むか、または内容証明を取り扱う郵便局でやってもらうことができます。
利用料金
区別 | 料金 |
|||
e内容証明郵便の料金 | 1通の基本料金 | 512円 |
||
加算料金 | 同文内容証明の場合の2通目 | 通信文用紙1枚目 | 221円 |
|
通信文用紙2枚目以降 | 211円 |
|||
上記以外 | 通信文用紙1枚目 | 390円 |
||
通信文用紙2枚目以降 | 358円 |
|||
謄本の返送料金 | 通常返送(1通当たりの料金) | 298円 |
||
一括返送 | 494円 |
|||
再度証明の料金 |
通信文用紙1枚目 | 375円 |
||
通信文用紙2枚目以降 | 353円 |
|||
※謄本の返送料金も必要となります。 |
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3)事案別の文例
1)借家契約に関する内容証明
物を借りて、借り賃を支払うことを賃貸借契約と言います。建物や土地がその代表例で借地借家法が制定されていますが、他にも例えば自動車、機械、家具、本などいろいろな物に関してもこの賃貸借契約は結べます。
この賃貸借契約には本来民法が適用されますが、建物や土地の賃貸借契約に関しては借地借家法が民法より優先して適用されます。
人口のわりに国土の狭い日本では土地や建物の需要と供給がアンバランスになっています。
そこへ契約自由の原則を基本にしている民法を適用すると、立場の弱い借り手に不利な契約が出来てしまいがちです。
そこで借地人や借家人を保護するために借地借家法が制定されています。
そこでは、家賃の値上げや契約更新の打ち切りなどの通知は事前に行うことが義務付けられています。
通知は口頭でも構わないのですが、通知したことの証拠がないと通知しなかったことと同じなるので、利害の対立する家主(地主)と借家人(借地人)の間でのやり取りは、内容証明郵便で出す必要があります。
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1-1 家賃の値上げ請求
借地借家法では社会情勢の変化に伴う経済事情の変動により、賃貸人の賃借人に対する借賃の増減を請求できる権利が認められています。これはたいていの賃貸借契約書にも盛り込まれています。

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1-2 滞納家賃の請求
借家人は借地借家法によっていろいろ保護されていますが、家賃の支払いを怠ると、保護されなくなります。その場合、家主は未支払いの家賃について、相当の猶予期間を定めて支払いの請求をし、それでもなおかつ支払わない場合には、賃貸借契約を解除できることになっています。
この場合の内容証明でポイントになるのは、「いつまでに」という期限をきることと、支払に応じない場合、契約を解除できる書き方にしておくことです。
「相当の猶予期間」についてははっきりした決まりはありませんが、家賃請求の場合5〜7が妥当なところと思われます。
なお、猶予期間の起点をはっきりさせるため、相手が郵便物をいつ受け取ったか分かるように、配達証明も付けておくとよいでしょう。

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1-3 家賃滞納による契約解除
借家人が家賃を支払わない場合には、家主は賃貸借契約を解除して貸していた物件を明け渡してもらうことができます。契約解除の場合、家主は契約解除日ではなく明渡し日までの家賃分を請求できます。

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1-4 無断譲渡・転貸による契約解除
賃借人は家主の承諾がなければ、賃借権を譲渡したり、賃借物件を転貸したりは出来ません。そのような場合は、義務違反に当たるので家主は賃貸借契約を解除できます。

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2)借地契約に関する内容証明
借家契約と同じように借地借家法には弱い立場の借地人を保護する内容が盛り込まれています。賃貸期間を30年以上にしなければならないとか、賃貸期間が到来しても特別なこと(正当な理由)がなければ、自動的に契約は更新するとか、簡単に借地人を追い出せないように定められています。
ただここで注意しておきたいのは、全ての土地の賃貸借にこの借地借用法が適用されるわけではないということです。
これが適用されるのは、建物所有を目的とする土地の賃貸借契約に限られます。
農地や山林の賃貸借、駐車場の賃貸借、土地をただで借りた場合、また、建築資材の置場等、臨時の使用のために一時的に土地を賃借した場合などの時は借地借家法は適用されません。
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2-1 地代の値上げ請求
借地借家法11条1項には「地代または土地の借賃が、土地に対する租税その他の公課の増減により、または近傍類似の土地の地代に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる」と規定されています。つまり、借地の場合も、社会情勢の変化に伴う経済事情の変動により、賃貸人の賃借人に対する借賃の増減を請求できる権利が認められています。

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2-2 地代滞納による契約解除の通知
借地人が地代を滞納している場合は、地主は借地人に対して地代を請求できますが、それでも支払わない場合には契約を解除出来ます。通常は地代請求の内容証明郵便を出し、それでも支払われない場合に契約解除の通知書を出すという、請求と解除がペアになっています。
ですので、これを1つにまとめてしまえば、わざわざ2度手間を踏むことはありません。

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2-3 無断で譲渡.転貸したときの契約解除通知
借地人は地主の承諾なしで借地権を譲渡したり、借地を転貸したりできません。それを犯した場合、地主は借地契約を解除できます。
たいていの場合、無断譲渡、転貸の禁止は契約書に記載されていますが、記載されていなくても借地人の義務として民法に定められているので契約は解除できます。
この義務違反は借りている土地の一部分だけでも成立します。
また、建物には敷地利用権が伴うので、借地上の建物を地主に無断で第三者に譲渡した場合は借地権の譲渡または借地の転貸が行われたものとみなされ契約解除の対象となります。
なお、借地上の建物を借地人が第三者に貸すことは、地主に無断でできます。

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2-4 建物の買取り請求
借地借家法には「建物買取請求権」というものが規定されています。借地契約が更新されない場合には、借地人は地主に対し、自分が借地上に造った建物やその他の物を時価で買い取るように請求することができるのです。
この「建物買取請求権」が認められるのは、借地期間満了の場合のみで、地代不払いなどの契約違反で解除された場合には認められません。
そして、借地人がこの買取請求をしたときは地主の意思に関係なく、時価でその建物及びそれに付随する資産を買い取るという売買契約が成立したことになります。

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3)不動産売買に関する内容証明
不動産売買は一般に大きな金額が絡む取引ですので、当事者どうしお互いに慎重にならざるを得ず、交渉もなんども時間をかけて行われるのが普通です。売り手、買い手とも交渉の申し込みを受けてもこれに応じる義務はありませんし、交渉を途中で打ち切るのも自由です。
契約が成立していなければ契約上の義務も負担することはありません。
しかし一旦契約が成立してしまうと、それが本契約であれ予約契約であれ、正当な理由なく契約締結に応じないと、相手方が契約準備のために要した費用等について損害賠償が生じるときがあります。
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3-1 売買契約締結を促す申し入れ
契約が成立していなくても、不動産売買の交渉の結果、契約締結の直前まで進み、相手方の契約締結の期待が法的保護に値すると認められるに至った段階で、正当な理由もなく契約締結に応じない場合は、(信義則違反、期待権侵害、あるいは契約締結上の過失などという理由により)損害賠償責任が生じる恐れがあります。そこで、明確に相手方との売買を断念し、それ以上の交渉をしたくない場合には早めにその意思を相手方に説明しておくのが賢明でしょう。

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3-2 手付を放棄しての契約解除
不動産の売買契約の成立とともに、買主から売主に一定の金銭が渡されることがあります。これを手付金といいます。手付にもいろいろありますが、実際の売買契約で交わされているのは解約手付がほとんどです。
これは、契約した後、買主は交付した手付金を放棄して、また売主は手付金を倍額にして返すことによって、自由に契約を解除することができるという趣旨のものです。
つまり、手付金を授受しているときは相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄することによって、売主は手付を倍返しにして、契約を解除できるということです。

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3-3 売買代金の請求と契約解除
金銭の授受が絡むあらゆる契約においてそうであるように、不動産の売買においても買主が代金を払わない場合、売主は買主に対して代金の請求を行います。その際、通常相当の猶予期間を定めますが、それでも支払いがおこなわれないと売主はその契約を解除できます。

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4)債権回収に関する内容証明
内容証明が最も利用されるのが、貸金、いわゆる金銭消費貸借がなされた場合です。貸金ないしその返済自体についてはもちろんのこと、担保(人的担保、物的担保)の処理を巡ってもトラブルの生じやすいところです。
そのため、後々裁判になったときのことを考えて、有力な証拠となる内容正面郵便が利用されるのです。
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4-1 貸金債権の請求
金銭消費貸借契約は借主がお金を受け取ったときに初めて成立します。期限が定めてあれば、借主はその期限内に返済しなければなりませんが、期限の利益(期限が付されていることによって、当事者が受ける利益のこと。)はもともと債務者(借主)にあるため、借主はいつでもそれを放棄できることになっています。
つまり実際上は、借主はいつでも返済できるということです。
逆に、期限前に貸主が返済を請求しても借主はこれを拒むことができます。
ただ、借主が担保を毀滅たり、手形の不渡りを出したり、分割金の支払いを怠ったりした場合は、期限の利益を喪失しただちに返還しなければならなくなります。
なお返済期限までの金利は利息ですが、弁済期を過ぎたものは遅延損害金になります。

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4-2 売掛金債権の請求
商品を売ったにもかかわらず、買主が一向にその代金を支払わないときは内容証明郵便でその催促をするのが有効です。その際、売買契約の内容を契約年月日、目的物、金額で特定することが必要です。
代金支払い期日を過ぎた後は、支払がなされるまで遅延損害金が発生します。

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4-3 保証人に対する請求
保証とは他人の債務と同一の債務を負担することです。この保証契約は債権者と保証人の間での契約で、書面(または書面と同視される電磁的記録)でなければなりません。
保証人には通常の保証人と連帯保証人があります。
通常の保証人は、借主が借金を返済できなくなったときにだけ支払い義務が生じます。
連帯保証人は債務に関して最初から主債務者と同等の支払い義務を持っている上に、催告に対して何の抗弁権ももっていません。
つまり債権者は最初から保証人に対して、主債務者と同じような請求が出来ることになっています。
理論上の連帯保証は保証の特別な場合とされていますが、実際、保証がなされる場合、そのほとんどが連帯保証です。

この保証という契約は、お金の貸主と保証人との契約です。
つまり貸主が直接保証人と会って、保証の意思を確かめた上で、保証人に署名捺印してもらうのが一番好ましいやりかたです。
しかし実際は、借主が保証人の署名捺印のある借用証や保証書を持参するだけで、貸主が保証人と会っていないことがほとんどです。
それゆえ、この保証契約の成否を巡っての争いが実際少なくありません。
代理権限を持たない債務者が保証人の代理として契約を結んだ場合などは本人である「保証人」が追認しない限りその保証契約は無効になってしまいます。
債権者は契約を締結した時点で保証人に保証意思の確認を内容証明郵便で確認しておくのが賢明でしょう。

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4-4 債権の放棄を通知する場合
商取引をしていた相手方が倒産し、売掛金が回収できなくなることがあります。そのままにしておくと、帳簿上その売掛金は資産として計上されて、税務上損をします。
回収できないのであればその売掛金を放棄し、その金額を損金として処理した方が賢明です。
税務対策として債務者に対し債権を放棄しますという通知をする場合には、必ず内容証明郵便にして証拠を残しておきます。
債権放棄の証拠があれば税務署から損金処理の否認もされずに済みます。

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5)担保権実行に関する内容証明
5-1 抵当権の実行
抵当権は最も典型的な担保物件で、金融取引に限らず、取引一般に関して重要な役割を果たしています。抵当権とは、簡単に言うと債権が弁済されないときに(抵当権の)目的物を競売によって換価し、その代金から優先弁済を得ることの出来る権利です。
担保物件は特別法により一定の動産や財団等も認められていますが、実際上ほとんどの場合が不動産(土地、建物)です。
債権者(抵当権者)が抵当権を設定した不動産の競売を裁判所に申立て、裁判所がその抵当不動産を売却し、その代金が債権者に分配されることになります。
抵当権の特徴としては以下のものがあります。
@担保物件は抵当権者が占有せず、その所有者のもとにある。
つまり、抵当権を設定しても抵当不動産の所有者(抵当権設定者)は別にその不動産を抵当権者に引き渡さなければならない訳ではなく、競売されるまでは自由に使用できる。
A複数の抵当権を設置できる。
抵当権は1つに限られたものではなく、後から別の抵当権を付けることも可能です。
競売になった場合、抵当権を付けた登記の順に従って配当されます。
B抵当権を付けた後で、その不動産を売却したり、他者に所有権を移すことができる。
以前は、抵当権を実行するにあたって、第三取得者(その抵当不動産について、所有権、地上権、または永久小作権を取得した人)がいる場合には抵当権を実行する旨の通知が必要でした。
それが抵当権実行についての内容証明であったわけです。
平成15年の民法改正により、抵当権実行の通知は不要となりました。
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5-2 抵当権の消滅請求
抵当権のついた不動産を買って、所有権を取得した者(第三取得者)は抵当権者が抵当権を実行して競売による差押えが発生するまではその評価額を支払うことにより、抵当権の消滅を抵当権者に請求することができます。これを抵当権消滅請求といいます。
抵当権消滅請求できる人は、第三取得者の中でも所有権を取得した人だけで、地上権、永久小作権の取得者にはありません。
抵当権消滅請求をしたい第三取得者は抵当不動産に登記したすべての債権者に、以下の書面を送らなければなりません。
@取得の原因・年月日・譲渡人及び取得者の氏名・住所、抵当不動産の性質・所在・代価その他取得者の負担を記載した書面
A抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る)
B債権者が2ヶ月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が上記@記載の代価または特に指定した金額を債権の順位に従って弁済または供託することを記載した書面
@とBは同一の書面ですることができ、両者を併せて記載した内容証明を利用するのが通常ですが、Aは内容証明に同封することはできませんので、別便(一般的には配達証明郵便が利用されている)で送らなければなりません。
この通知は、登記をしたすべての抵当権者に対してしなければならず、そのうち1人でも通知していないと、抵当権消滅請求の効力は生じません。

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5-3 競売の通知
抵当権者は抵当権消滅請求を受けた場合、必ずしもそれに応じる必要はありません。これを拒むには抵当権消滅請求の通知を受けてから2ヶ月以内に競売の申立てをしなければなりません。
それをしないと、抵当権消滅請求を承諾したものとみなされます。

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5-4 仮登記担保権の実行
抵当権のほかに、不動産を担保に取る方法として、仮登記担保というものがあります。これは、将来債務者がお金を返さない場合を考えて、債務者または第三者が提供する不動産に所有権移転の仮登記を付けておき、弁済期が来ても借金の返済がなされないとき、その肩代わりとして提供された不動産の所有権を債権者が取ってしまうというものです。
債権者は、債務者が弁済期に債務を返済しない場合、まず代物弁済の予約完結の意思表示をするとともに、債務者に対して一定の事項を通知しなければなりません。
これが、仮登記担保権実行の通知です。
この通知が債務者に到達してから2か月が経過しないと、債権者はその不動産の所有権を取得することが出来ません。
また、債務者は、2か月以内に返済すれば、その不動産を債権者に取られずにすみます。
債務の返済をしないまま、この2ヶ月間が経過したときには、その不動産が取られる代わりに、その時点での債権額と不動産の価格を比べた額が債権の額よりも上回った場合は、その差額を債権者は債務者に清算金として支払わなくてはいけません。
債権者が清算金を支払うのと引きかえに、不動産の引渡しと所有権移転登録が行われます。
仮登記担保権より後順位の店頭権者等は、清算金の支払いがなされるまでの間に、清算金を差し押さえることができ、差し押さえると登記の順序に従って清算金が支払われます。
@仮登記担保権の実行通知書 |
予約簡潔の意思表示とともに、実行通知書が相手に到達した日から2ヶ月を経過した時点の土地等の見積価格ならびに、その時点での債権額(元本・利息・遅延損が均等も含む)や、債務者等が負担すべき費用で債権者が代わって負担した者の額をはっきりと書かなければいけません。 仮登記担保の対象となっている不動産が2個以上のとき、例えば土地と建物とか、個々の見積価格を書き、個々にいくらの債権を割り振るか書いて通知しなければなりません。 |
A後順位担保権者等に対する通知書 |
仮登記担保の後に、抵当権者、仮登記担保権者、先取特権者 注1、質権者 注2、または所有権を取得した者があるときは、債務者等に対し債務者ないし保証人の仮登記担保権実行通知書が相手に到達した後に遅滞なく、これら後順位担保権者や第三取得者に対し、(1)実行通知をしたこと、(2)その通知が債務者等に到達した日、(3)債務者等に通知した事項、を通知しなければなりません。 後順位抵当権等は、仮登記担保権が実行されると、すべて抹消されてしまいますので、清算金が債務者に渡される前に差し押さえて、債権の回収をはかりましょう。 |
注1.先取特権とは、一定の債権について、債務者の財産から他の債権者より優先的に弁済を受ける権利です。
注2.質権とは、担保物権(他人の物を支配することによって、自己の債権の回収を確実にするための権利)の一つで、債権の担保として、債務が返済されるまでの間、物品や権利書などを債務者(お金を借りている人)または第三者から、債権者(お金を貸している人)が預かっておき、債務を返済できない場合は、それらを売却等して優先的に弁済を受けることができる権利のことをいいます。
@仮登記担保権の実行通知書

A後順位担保権者等に対する通知書

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6)商品売買に関する内容証明
6-1 商品代金の請求
商品を売ったのに、買主がなかなか代金を支払わないときに内容証明郵便で請求することになります。請求というのは、将来契約を解除するときの布石となる大事なことなので内容証明にしておくのが通例です。
その際5日から10日前後の相当の猶予期間を定めておきます。

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6-2 欠陥商品についての請求
買い受けた商品に欠陥があった場合、買主がその欠陥を知っていたという事情がない限り、買主は代わりの商品に取り換えるか、修繕を求めることができます。もし、売主に欠陥商品を渡した責任がある場合は、損害賠償の請求や契約解除をすることもできます。
ただし、契約の解除をするときは相当の猶予期間を定めて、修繕ないし代替品との交換を請求し、その期間内に、売主が応じなかったときでないといけません。
商法526条では、商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査し、検査により売買の目的物に瑕疵(欠陥)があることまたは、その数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵または数量の不足を理由として契約の解除または代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。
売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合においても、6ヶ月以内にその瑕疵を発見したときも、同じと規定されています。
ただし、売主がその瑕疵または数量の不足につき悪意があった場合には、適用されません。

売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合、売主は担保責任を負うこととされ、この責任を瑕疵担保責任と呼んでいます(民法 570 条 瑕疵担保責任による契約の解除または損害賠償の請求は、法律関係を早期に安定させるという趣旨から、買主が目的物に瑕疵があることを知った時から 1 年以内にしなければならないとされています。
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6-3 クーリング・オフによる請求
訪問販売は、家に居ながらにして物が買えるなどの便利な面がある反面、欲しくない物まで買わされてしまうことがあります。「アンケート調査」とか「消防署からの委託」などと言って、セールスマンの甘言や巧みな話術に乗せられて、物を購入したり、契約書もよく読まないまま契約を結んだりして後から後悔したりします。
その時になって契約を解除しようとしても、業者は契約が成立していることを理由にして契約の解除を拒否し、よくトラブルが生じていました。
そこで消費者を保護するため、特別商取引法が作られ、いろいろな規制や保護が認められるようになりました。
消費者契約法で規定されている不当な勧誘 @重要な事項について、事実と異なることを告げる A重要な事柄について、利益になることばかりを告げ、不利益についてはわざと隠しておく B将来の見通しが解らないことについて、断定した説明をする C消費者の家または勤務先を訪問して契約を進めているとき、消費者が帰って欲しいと要請しているにもかかわらず、居座るなどして消費者を困らせて契約させる D契約を進めている場所から消費者が帰りたいと言っているのに、事業者がそれを妨害して消費者を困らせて契約させる |
本来売買契約の解除は相手方に債務不履行があったり、目的物に隠れた瑕疵があるような場合にしか認められないのですが、クーリング・オフの制度は、そのような事由がなくとも当然に買主が申込の撤回や解除ができるとするものです。
販売契約をした後、理由のいかんを問わず8日間以内なら消費者側で自由に解除することができます。

クーリング・オフによる解約の場合、業者は損害賠償や違約金の請求はできません。
また、訪問販売ではなく、営業所、代理店等でなされたものや、既に賦払金全部の支払いが終わったもの、消耗品で全部または一部を使用または消費してしまったものについては、クーリング・オフは適用されませんので、注意が必要です。
クーリング・オフは訪問販売以外にも以下のようなものが認められています。
通信販売 | 広告に返品の表示がない場合は商品が届いてから8日間は解除可能。 |
連鎖販売取引 | いわゆるマルチ商法のことで、この場合、20日間以内は解除可能。 |
電話勧誘販売 | 8日間以内は解除可能。 |
特別継続的役務提供 | エステ、英会話教室、パソコン教室、学習塾、結婚相手紹介サービスなどがこれにあたる。8日間。 |
内職、モニター商法 | 20日間以内は解除可能。 |
不動産販売 | 宅地建物取引業者が売主となり、業者の事務所等以外の場所で契約したときに限る。8日間。 |
生命保険、損害保険 | 保険期間が1年を超えるものを営業所以外の場所で契約したときに限る。8日間。 |
訪問購入 | 業者が個人宅を訪問して物品を購入する場合。8日間。 |
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7)会社経営に関する内容証明
株式会社は株主によって構成されています。わかりやすく言えば、株主が株式会社を「共有」しているのですが、その各株主の持分の単位が株式です。株主はその有する株式に応じて会社を共同的に支配し、株主総会を通じて会社としての意思決定をし、取締役を選任して業務を追行させます。
この株式を証券としたものが株券であり、定款で株式を発行する旨を定めた株式会社は株券を発行しなければなりません。
但し、公開会社ではない場合は、株主から請求があるまでは株券を発行することを要しません。
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7-1 株券の発行または不所持を求める申請
株主は株券を実際に所有していなくとも、株主名簿に名前が記載されている限り実質上の権利を保有しています。しかし、投下した資本を回収するために譲渡する場合などはこの株券が必要となります。
株主から請求があった場合には株券発行会社は速やかにそれに応じなければなりません。

株券発行会社は、会社の成立後または新株の払込期日後、遅滞なく株券を発行しなければなりません。
これを株券不所持制度といいます。
これは株券が(紛失など)何らかの理由で流通におかれ第三者に善意取得(注)された場合には本来の株主が権利を失ってしまうところから、株主の権利の安全のために設けられた制度です。
株主は当分株式を処分する予定がなければ株式を所持する必要がないので、その方が安全です。
(注)「基本的に株券を受け取った人は保護される」
実は自分に株券を譲ってきた人物が本来の意味での株券の持ち主ではなかったということが露見しても、株券を受け取った時点でそのことを知らなければ、受取人は保護される。

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7-2 株式の譲渡
同族や親しい者で運営している比較的規模の小さい会社では、会社にとって好ましくないと考えられる者が株主になって会社の経営に口出ししてくると、会社運営を円滑に進めるうえで望ましいことではありません。そこで、株式の譲渡には会社の承認を要する旨を定款で規定することができることになっています。
株式を譲渡しようとする者は会社に対し、譲渡の相手方及び譲渡しようとする株式の種類と数を記載した書面を以って請求できますが、会社がその譲渡を承認しないときは、会社または他の者(指定買取人)が株式を買い取るよことを請求できます。
会社が譲渡を承認しない場合には、会社は譲渡承認請求の日から2週間以内にその旨を株主に書面で通知しなければなりません。
会社による買取の場合は株主総会で決定する必要があり、決定された事実は不承認の通知をした日から、40日以内に株主に通知しなければなりません。
指定買取人を指定した場合は、不承認の通知をした日から10日以内に、指定買取人が株主に対して、氏名を受けた旨及び買い取る株式の書類と数を通知しなければなりません。


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7-3 株主総会の招集の請求
株主総会は、株主全員で構成される株式会社必須の最高意思決定機関です。株主総会は会社法に規定する事項および株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができます。
ただし取締役会を設置している会社の場合は、基本的な事項(及び定款で定めた事項)に限り、決定権があります。
議決権は1株につき1票ですが、会社自体が保有している株式等については議決権が認められていません。
株主総会は総株主の議決権の過半数にあたる株式を保有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で決するのが原則です。(普通決議)
しかし、定款変更や取締役の解任等、重要な事項は出席株主の議決権の3分の2以上の多数をもって決します。(特別議決)
株主総会は毎年1回、一定の時期に招集しなければなりませんが(定時総会)、そのほか、必要ある場合随時開催できます。(臨時総会)
この株主総会の招集は取締役会で決定しますが、株主にも一定の条件のもとに招集を求める権利が与えられています。
6ヶ月目より引き続き発行済み株式総数の100分の3以上(注)にあたる株式を所有していることがその条件です。
株主が総会の招集をした場合、会社は速やかに招集手続きを取らねばならず、請求の日から8日以内の日を会日とする総会招集通知が発せられないときは、主は裁判所の許可を得て自ら総会を招集できることになっています。
(注)複数の株主の持ち株が100分の3以上に達すれば、その複数の株主が共同で株主総会招集を請求できる。

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7-4 株主総会議事録及び帳簿の閲覧の請求
総株主の議決権の100分の3以上、または発行済み株式総数の100分の3以上にあたる株式を有する株主は会社の営業時間内はいつでも株主総会議事録及び会計帳簿ならびにこれに関する資料の閲覧・謄写を請求することができます。株主は閲覧権を、自ら行使するほか、公認会計士等の代理人に行使させることもできます。
請求があった場合会社は、その請求が以下のいずれかの場合でない限り、請求を拒むことはできません。
@当該請求を行う株主がその権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき |
A請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき |
B請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事するものであるとき |
C請求者が会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写によって知り得た事実を、利益を得て第三者に通報するため請求したとき |
D請求者が過去2年以内において、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧または謄写によって知り得た事実を、利益を得て第三者に通報したことがあるとき |
なお帳簿の閲覧請求においては、その理由を付した書面でしなければなりません。

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8)その他特別な内容証明
8-1 交通事故による損害賠償
不法行為に基づく損害賠償請求権が成立するには@故意または過失によって、A他人の権利または法律上保護される利益を侵害し、Bそれによって損害が発生したこと。
以上3つの損害発生と違法行為との因果関係が必用です。
交通事故の場合、もっぱら過失の有無が問題となります。
過失とは、ある結果が生じることを認識すべきであるのに不注意でその結果発生を認識しなかったということです。
つまり注意義務を怠ったということです。
過失がなければ不法行為者とはみなされませんので、責任を問われることはありません。
一方、直接の不法行為者でない者も損害賠償責任を負うことがあります。
例えば被雇用者(従業員)が会社の業務中に交通事故を起こした場合には、責任を負います。
また自分のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)(注)も原則として責任を負うとされています。
(注)運行供用者とは、その自動車につき運行支配、運行利益を有する者をいうとされています。
自動車の所有者は、盗難にあったりしてその運行支配を事実上完全に失った場合以外には、ほとんど常に運行供用者にあたる一方、所有者でなくても、これを借り受けて使用していた者など、実質的にその運行を支配し、利益を得ていた者もこれに該当することになります。

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8-2 医療事故による損害賠償
医療事故の場合は、交通事故の場合における運行供用者責任にあたるものがないことを別にすれば、損害賠償請求の方法や内容等は交通事故の場合とほぼ同様です。医者や看護婦に過失がある場合にはその使用者である医療法人等が使用者責任を負います。
ただし、直接の加害者が公務員であるときは、国家賠償法に基づき国または公共団体が賠償責任を負うものであって、直接の加害者である公務員に対しての損害賠償請求は出来ません。

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8-3 職場におけるトラブル
1.セクハラ近年、職場でのセクハラ(セクシャル・ハラスメント=性的嫌がらせ)が良く問題となっています。上司が女性社員に対して胸やお尻に触ったり、その地位を利用して性的関係を迫ったりする場合がこれにあたります。
セクハラを受けている従業員はその直接の加害者ばかりでなくその使用者でもある会社に対して抗議し状況の改善を求めることができます。
会社が改善義務を怠っている場合には、使用者責任としての損害賠償義務が生じます。
そのためにも内容証明を利用することで、会社に改善を要求したことを証拠として残しておく必要があります。

2. 過労死
働きすぎが原因で、命を落としてしまう「過労死」の問題は、1980年代後半から社会的に大きく注目され始めました。
過労死遺族の方や、労働問題に取り組んでいた弁護士を中心として、これまで様々な形で過労死をなくす活動が続けられていましたが、その取り組みが大きな成果として結実したのが、2014年に制定された過労死等防止推進法です。
過労死問題が大きな社会問題であり、国がその対策を進める責務があることが、初めて法律の中で確認されたのです。
「過労死」には過重な労働によって、脳心臓疾患を発症し直接的に死に至るものと、それによって精神疾患などにかかり、冷静な判断ができなくなり、自死するに至るものがあり、後者のこうした勤務中のストレスによる自殺は、「過労自死」と呼ばれています。
過労死・自殺が労働災害であると認定されるためには、遺族が自ら労働時間の証拠を集め、その死と会社の働かせ方の因果関係を証明しなければなりません。
家族を失い精神的に辛い中、そうした作業を進めることは大きな困難をともなうものであり、加えて、企業の中には自らの責任を認めたくないが故に、長時間労働やパラハラの証拠を隠滅する企業や、元同僚に箝口令を敷き証言させないケースもあります。

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8-4 名誉棄損
他人の名誉を違法に傷つけること、すなわち名誉棄損も不法行為となります。この場合の名誉とは人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであって、人が自己自身の人格的価値について有する主観的評価、すなわち名誉感情は含まないとされています。
つまり名誉棄損とはその人の社会的価値を低下させることであると言えます。
したがって、公共の場での演説、チラシやビラの配布や掲示、公共メディアによる報道など、相当範囲の人に影響を及ぼす手段を用いた場合のみ問題となりうるのであって、2人だけの場で相手の名誉を傷つけても(名誉感情の侵害にあたることはありますが)ここに言う名誉棄損にはなりません。
不法行為による損害については金銭賠償が原則ですが、名誉棄損の場合には一種の原状回復として裁判所は名誉回復のための適当な処分を命じることができることになっています。
和解の場合は、謝罪文の交付や公の場だの謝罪、訴訟の場合は新聞や雑誌等に一定の謝罪文を掲載するのが通常です。

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※参考文献
自由国民社 多比羅誠著 「内容証明を出すならこの1冊」
自由国民社 「内容証明の書式全集」
日本法令 荒木新五著 「内容証明の書き方全書」